かき集めて
soft_machine


ことばは
かけらだ
かき集めて
かき集めて
つくる砂の城が
ひかりを浴びて
窓に飾る花の叫びだ
レースがひるがえり
それは、かけらだ


宿酔いだから
洗濯に行こう
宿酔いだから
ってわけじゃあないが
アスファルトは扉を開けるたびに
おはようと言ってくれて
もう夕方なのに
今日も元気だ
今日も天気で
キラキラしている
他にもいくつか囁いて
俺が歩くたび
くすぐったい、
そう言って
わらう

薄くて
長くて
細い橋には
ホームレスが
かもめに包まれるようにして
パンをあげていた
夕日に差し出すようにして
自分で食べればいいのに
けれど
今年も冬が越せたから
もういいんだね
おはよう
おはよう
久しぶりでも
お互いを覚えて忘れなくなったら
あした、会えたら、
名前を聞こう

夜と霧を通り抜けるコートの影
顔も身体も空っぽだ
かた目を瞑った並びだ
老人ばかりの商店街が両手を広げて
青い血を空に振り染める

コインランドリーに待つ間
ちいさな声を立てるものがある
この部屋のどれだろう

蓋を開けると
前の女の匂いが残されて
濯い終りを告げるブザーは
頁にしおり腰を湿らせ

また酔っぱらって
いったい何軒?

酒くらい、しつこいなぁ
毎度毎度あんまりうんざり
バイバイ、小言はまた今度

まだ何かわめく洗濯機に
足があって付いてこられたら最悪だけど
残念だから
可愛く思える
振り返って見たら
閉めたはずの蓋を持ち上げる
誰かの手
まだ誰にも孕まれていない
俺の息子か

世界の真ん中で踊ろう
あの世とこの世の境界線に沿って
夜を孤独で過ごすために
くるくる回りながら下町の商店街は
もうすっかり夢の中で
温かい雨の中で
寝返りは打てないけれど
幸せなんだと思う
俺はツイストしか知らないし
ツイスト踊っていると
楽しい

橋が
自動車が通ると
落ちるんじゃないかというくらい
たわんで
きしんだ

那珂川の上を渡って
俺たちをはこんで
踊らせ
かもめにつつまれ
ホームレスに屋根をあたえ
食べられる猫をそこに焼く
風に渦をまかせ

遠くで信号が点滅しながら
男と女を繰り返していると思うのは
間違いかい?
光っている時おとこで
消えてる間はおんなだ
べつにどうだっていいけど
幸せなんだ
酔っているんだと思うよ
けれどまっすぐ歩けるよ
白線だってきちんと踏んで
足元だけに気を囚われて
突然現れた看板けっとばして
おやじにどなられごめん
いつの間にか
洗濯ものを入れたビニールも
持っていないんだ
これでまた
酒を買う口実ができたけれど

ただいまは言わない
暗闇は返事をしないから
ただ足音だけで知らせる
屋根裏の住人は
餌をくれない
新しい住人に愛想をつかせて
そろそろ引っ越しの準備をはじめるだろう
それなら、ビアトリクス・ポーターの絵本にでてくる
ジョニーのようにどこか遠くまで旅して
ついでに新しい家をさがすってのは?
俺の旅は長いのが終わって
しばらくはここに暮らしそうだから
ここから海は望めないけど
自転車漕いだって、博多湾だし
風呂に入っても眠れなかったら
また、飲みに行こう


まだ、ホームレスが橋の下で
起きていたなら
あたらしい詩集も
もっていってやろう


あさになるまで
きっと眠れないから


あいさつは、
おはようが
一番すきだ
哀しみの
かけらも
ふくまない






自由詩 かき集めて Copyright soft_machine 2007-04-24 13:55:57
notebook Home 戻る