葉桜の後に
霜天

春が過ぎた
それから
君たちの後ろには羽が生えて
彼女のいた屋根の
あの群生の上を越えていった

それから、と区切って
何を始められたか、と問われれば


並木の色合いは変わらないもので
下に向かう花びらも
上に向かうささやきも
色褪せていくのはどうやら手のひらの中だけのようで
ささやく声は川になって
溢れた水はまた花になって
届かない場所にまで
届けていく

桜が見たいといったのは
君の中で五月が終わった頃で
背中の羽は広くなりすぎて
抜け落ちたものが
煙のように漂い始めていた

霞が
春の霞が
辺りを撫でていくように
この耳の側で泣いているように

それでも
春は過ぎて


やがて
君たちの後ろには羽が生えて
抜け落ちたものが煙のようになって
彼女のいた屋根の
あの群生の下を埋めていく

後に残る声たちも
葉桜が降る後になったら


自由詩 葉桜の後に Copyright 霜天 2007-04-24 01:59:25
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