Poor Poet's Love Song
佐々宝砂

ぼくが冷たい雨に濡れて走っていたとき
きみはあいつと酒を飲んでいた
ぼくが金策にかけずり回って
もう電話する相手もなくなって
ガス欠寸前の車内で携帯電話と格闘していたとき
きみはやっぱりあいつと酒を飲んでいた
金のことをどうこう言いたくはないが
きみの酒代の出所はぼくの財布だ
あいつから出ることももちろんあるよ
それは知ってる
あいつがぼくより金持ちだってこともね
きみがお金のかかるバカだってこともわかってたが
これほどとは思わなかったし
残念ながらない袖は振れない
ちぎれるほど振っちまったので
もうこれ以上振れないんだ
だからぼくはぼくにできることをする
あいつよりずっと熱い酒をきみにやる
ぼくは詩人だから
きみがほしがるものすべてを言葉で構築する
きみが空を飛びたいなら
飛ばせてやれる
月の裏側にだって連れてゆく
時空を駆け抜けるタキオンより素早く
きみを天空の彼方に連れてゆく
言葉のエメラルドをきみの首にかける
言葉のティアラをきみの頭にささげる
もうこれが最後で
これ以上きみにやれるものはないんだ
ぼくの財布はきみのせいですっからかん
だけど絶対に
ぼくなしではいられないようにしてやる
言っておくがぼくは本気だよ
詩人てものは嘘つきだけどね


自由詩 Poor Poet's Love Song Copyright 佐々宝砂 2007-04-23 23:13:04
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