陽炎月
有扉なぎさ

勢いよく 部屋から飛び出した
あなたから 逃げ出した
深い夜の刻

私の目には 冷たい涙が溜まっていて
見上げる月は 歪んで見える

行き先などなかった
ただ深い闇へと 沈んで行きたかった

引っつかんできたジャケットのポッケに入っていた
余計なケータイの電源は切った

本当に私を思うのなら
私だけを大切に思うのなら
他の女に目を向けたりせずに
私だけをじっと見ていて

たくさんの輝く星たちに紛れていても
あなたの目にいちばん眩しく映る星から
目を離さないで
深い闇に沈んでしまっている一等星 
見つけてごらんよ

そして
私のことを掴まえて
その指で私の涙を拭って
今はゆらゆらしている月
はっきりとした輪郭を私に見させて

その姿を 存在を
お互い確かめ合おうよ

揺らいで見える月は

あなたへの思いにとても似ている


自由詩 陽炎月 Copyright 有扉なぎさ 2007-04-23 21:15:32
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