ノート(膝を抱いて)
木立 悟




片目ばかりが傾く夕べに
しあわせの少ない膝を抱き
花はつぼみのうたをうたう


午後にひたいをしたたるものは
すべて血のように感じられる
その熱さゆえ その太さゆえ


けだものの骨から水は湧き
葉を食らう顎
葉を枯らす喉


順番は拙い
だが愚かとは記せない
みな言わずとも伝わる石の夕べ


裂く音の間に間に
縫う音は寄り添う
膝おおう膝おおう緑衣


夜という字を見つけるたびに
胸が苦しくなる夕べ
雨が近づくことを知る手


むさぼるものの矜持がかがやく
初めてのかたくななものをほおばる
曇が燃えても果てることなく


雨はまぶしく
無数に分かれる
すべてしずくの瞳に見つめる


午後をふちどる水の道
膝の痛みが消えるその瞬
空へとからだを反らし微笑む















自由詩 ノート(膝を抱いて) Copyright 木立 悟 2007-04-22 22:39:34
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