ノート(膝を抱いて)
木立 悟
片目ばかりが傾く夕べに
しあわせの少ない膝を抱き
花はつぼみのうたをうたう
午後にひたいをしたたるものは
すべて血のように感じられる
その熱さゆえ その太さゆえ
けだものの骨から水は湧き
葉を食らう顎
葉を枯らす喉
順番は拙い
だが愚かとは記せない
みな言わずとも伝わる石の夕べ
裂く音の間に間に
縫う音は寄り添う
膝おおう膝おおう緑衣
夜という字を見つけるたびに
胸が苦しくなる夕べ
雨が近づくことを知る手
むさぼるものの矜持がかがやく
初めてのかたくななものをほおばる
曇が燃えても果てることなく
雨はまぶしく
無数に分かれる
すべてしずくの瞳に見つめる
午後をふちどる水の道
膝の痛みが消えるその瞬
空へとからだを反らし微笑む
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