キャメル
黒子 恭
メンソールが目にしみて
お前はきっと、してやったり顔
少し、じろっと目を向けたら
またそっけなく横を向いている
知らないふりは上手くなったんだな
キャメル、その瘤に
俺の愛情の一欠片
埋めてもいいか
寂しく唄うくらいなら
俺が手を取りたい
四角い砂漠の真ん中に
お前は独りだ
瞼を閉じて
それを覆っているんだろう
キャメル、
横顔にキスをしてから
火を付けるから
独りで生きるのはやめろ
煙が向かう先に
お前の行きたかった場所が
ある
火を消す刹那の、あのしなびた輝きで
お前は眠りにつくんだ
キャメル、
独りで生きないでくれ
独りで生きないでくれ
その横顔に、その瘤に
その申し訳なく伸びている、尻尾に至るまで
メンソールがゆき渡ったなら
キャメル、俺が会いに行くから
黒ずんだ肺の隅々で
お前に出会いたいんだ
今夜その渇いた砂漠を抜け出して
夜景の綺麗な場所にでも
連れだしてやるから
だからキャメル、
独りで生きないでくれ