The soft feather story Ⅳ
優羽

 ? The earth's story

 絶望と希望は同時にやってくる。
ひとりぼっちの神はずっと窓から地球を見ていた。
恐れられようとも人が好きだった。
なぜなら楽しいことも悲しいこともひとりでは感じられなかったからだ。
しかし、永遠という時間は長すぎた。
時代は流れ、それがいたということを知る人はいなくなり、
神は「存在」しないモノとなった。
そしてそれはついに小さな奇跡を起こすことに決めた。

 痛みに目を覚ますとそこは知らない場所だった。
1本の道だけがどこまでも続いていた。
右も左も砂の中にコンクリートの道があるだけで、
他には何も見当たらない。
飛ぶことはもうできないので、
とりあえず羽のない右側へ向かうことにした。

 千切った左の羽の部分が少し傷むが、
とにかく自分の幸せをみつけたかったので歩いた。
砂しかなく殺風景だが、考えごとをするには最適だと思った。
とりあえず何もなくなってしまった左が寂しかったので、
コンクリートの1本道を左側へ向かうことにした。

 そして偶然にも奇跡は起こった。
いや、神が創り出したのだから必然というべきかもしれない。
片羽の天使と悪魔は地球の真ん中で出会ったのである。
互いに相手をまじまじと見て、顔までいったとき視線が合わさった。
2人は思わず顔をそらしてしまった。
そしてゆっくりともう一度相手をみて、次は視線をそらさなかった。
目から涙が零れ落ちた。
(あぁ、なんて優しくも寂しい目をしているんだろう。)
緊張の糸が切れたらしく、赤ちゃんのように泣きじゃくった。
どちらともなくぎゅっと抱きしめあった。
何も言わなくても互いのことはわかった気がした。
そして天使は他人の愛を、悪魔は幸せというものを初めて知った。
少しして泣き止んだ後、互いの顔を見て今度は微笑みあった。
手をしっかりつないで、2人は1つになった。
もう2人には晴れわたった空しか見えていなかった。

 トントン、トントン。
一度も開いたことのなかった扉があけられた。
ここは地球の記憶が集まる場所。
そうして神はまた「存在」しはじめた。


散文(批評随筆小説等) The soft feather story Ⅳ Copyright 優羽 2007-04-20 19:50:03
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