喪花
月夜野

    弔いの言葉が捌かれて
    彼らはそれを咀嚼する
    通約された痛みの淵に
    紫紺のループを描きながら
    桜は
    自らの闇に向かって落下する


    蒼ざめた幹の震央で
    萌えいづる芽が震えだし
    無限の射程を前に頽れる
    その刹那
    予兆は増幅されて
    彼らのしめやかな葬送がはじまる


    散り敷かれた花の上を
    脚の萎えた人の歩調で歩む
    この春の冷気の奥底で
    むなしい深みへと向かった
    流された血のことを想う

   (私たちはただ嘆くことしか
    できないのですか)


    晴れわたる空の中に
    桜色の悲哀が透けている

    春の溶暗


    


自由詩 喪花 Copyright 月夜野 2007-04-19 22:01:12
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