バスタブ
優羽

今日は入浴剤のかわりに
思い出を溶かしてみることにした
みるみるうちに水が染まっていくが
どうもうまく混ざらない
思い出にも種類があったらしい

やわらかなパステルカラーとかたいモノクロ
ふたつがマーブルになって
なんとも不思議な液体になっている

さてどうしようと思ったら
どこかが海の水面のように
キラっと輝いた
よく目を凝らしてみると
ひとつの思い出だった
これは懐かしいと思い
手ですくって温もりを感じた
そしてさらさらと湯舟に戻した

そろそろのぼせてきたので
お風呂から立ち上がると
湯舟がいっせいにキラキラ輝きだした
色はひとつに中和して透明になっていた
私はごめんごめん、と微笑み
湯舟に手をいれ光源をすくった


自由詩 バスタブ Copyright 優羽 2007-04-19 09:12:44
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