「僕の自由」
和 路流(Nago Mitill)

自転車を乗り捨てて、駆け上がった歩道橋の上。
流れる車を下に見ながら、一人 跳ねて踊った。
土砂降りの雨で、制服は ぐしゃぐしゃ。
泥にまみれても、気分は最高だった。
灰色の空を見上げながら、その時 思った。
僕には、自由がある。
今、ここから飛び込んで、車の波に血を ぶち撒けるのも、僕の自由で、
明日から続く未来を見に、生き続けるのも、同じだけの僕の自由だ。

広い世界を見るのが怖くて、自分で目を逸らしていたのに、
自分で作った狭い部屋の中で、
世界は狭い、誰も僕を受け入れてくれないと嘆き、
世界を憎んだつもりで、自分を嫌悪していた。
群れるより孤独がいいと、冷めたふりを装いながら、
他人の価値観に依存した定規で、自分の度量を測ってたんだ。

泥まみれの制服で踊った時、分かった。
今、死を選ぶのも、生を選ぶのも、
同じだけの価値がある、僕の自由。
世界を狭めるのも、世界と繋がるのも、僕の自由。

自由が無造作に与えられているという幸運を噛み締めながら、
完全な自由は、ただ孤独を生むのだと知った、若い日の僕。

孤独に死ぬのも、世界に僕を生かすのも、
僕の自由。
古ぼけた歩道橋の上で、踊らなくなった今も、
灰色の空を見上げながら、自由の意味を考えている。

僕は、自由だ。


              (2007年・筆)


自由詩 「僕の自由」 Copyright 和 路流(Nago Mitill) 2007-04-19 04:50:25
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