ドラマチックレコード
はじめ

 僕は夜遅く ドラマチックレコードを聴く
 布団の中に潜りながら涙を流す
 あの頃の記憶が蘇ってくる
 僕の膨張した心を絞り出して涙が出てくる
 雨に沈んだ森
 僕は君の作ってくれた様々な布を合わせた洋服を着て踊っている
 君も自分で作ったドレスでこの歌の世界に合わせて心に入れて踊っている
僕は君の美しい胸元に目がいく
 草花の匂い
 皮靴だって君が作ってくれたんだ
 君は服を自分で作るのが好きだった
 靴だって自分で作るのが好きだった
 アクセサリーだって自分で作るのが好きだった
 人々がイメージしている君とは違う君が僕の心の中にいる
 君が踊るのが鮮明に スローモーションで見える
 僕が好きなのは君の影なのかもしれない
 周りに森がある
 空だけが隔絶されていなくて 何処までも曇っている
 僕はレコードのドラマチックレコードをかけるよ
 何時までも続くダンス
 君は僕の熱い心の中で溶けていく
 草木花と一緒に溶けていってマーブル状に渦を巻いているよ
 それっ ダンス ダンス ダンス
 最後の間奏で君はとっても笑顔になって踊っているよ
 聞こえる歌は君が歌っている歌
 この詩は君自身なんだ
 何度も何度も同じ歌を流すよ
 レコードの中の季節が終わっていく
 夜になって満天の下 スカートを掴んで君はまだ踊っている
 僕もまだ踊っている 永遠の彼方で
 夜の海が重力に揺れて縞をつくって星空を映し出し 僕達を安心させてくれる
 海の感覚がここまで押し寄せてきて僕達や眠っている草木花や森を飲み込んでいく 
現実に還ると曲は終わっていた
 初めての静寂が僕を無心にさせる
 君は僕の瞼の裏にしっかりと焼き付いている
 30分弱の夢が終わろうとしている


自由詩 ドラマチックレコード Copyright はじめ 2007-04-18 05:27:52
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