早春
月焦狼


今は昔となりにしが 先の分からぬ今なれど
希を叶うる術ありと 信じた友と走りたる

授業の合間の休憩に どちらともなく集まって
ギターのラインのボーカルと ベースに分かれて合唱し
うまく行きしは笑いあい 調子外れもまた笑う
周囲の目など気にせずに 笑いに満ちた過ぎし日々

白髪を嫌って黒く染め 茶色になりて登校し
色を抜いたと間違われ 生徒指導部と大喧嘩
似合うから別にいいだろと 変に慰め苦笑する
教頭校長何のその 君はそのままあればよい

秘めたる夢を打明けて 互いに話を止められず
逸る心の其のままに ひたすら遠く自転車で
駆けた我らを包むのは やさしい春の宵闇と
寒さに耐えて麗しい 幽かな梅の香りのみ

今でもやはり 思い出す 夕闇に梅の香をかげば
駆け抜けた青い春の日と 隣で笑う 友の顔



自由詩 早春 Copyright 月焦狼 2007-04-16 00:32:46
notebook Home