うまい棒のチーズ味
柴田柴助

小学校の時から
毎週月曜日のスイミングクラブに行く前に必ず通っていた近所の酒屋さんが
 
とうとう引退するらしい
 
あのじいちゃんは今
何歳なんだろう
 
毎週月曜日に独り必ず店に行っては
うまい棒のチーズ味をおやつを買っていた少女は
もうかれこれ20年の月日がたち
あの頃に通っていたスイミングクラブも卒業して
独り電車にも飛行機にも乗るようになり
独りマニュアルの車をガンガン飛ばす程に成長し
得意だったバタフライも
もうベタベタフライ程に完熟し
 
店がなくなる事を知ったとき
 
少女はやっと自分が成長したことを、
知った。
 
あの頃は必要なかった勇気を振り絞り
 
うまい棒のチーズ味を
 
買いに、行った。
 
店に入ったとき
大人になった少女は
自分は幼かった時代があった事を、知った
 
 
うまい棒のチーズ味は
売ってなかった
 
ちなみに
 
じいちゃんは
わからないけれど
多分、年をとったんだと少女は思った
 
うまい棒のチーズ味の代わりに
ビールを一缶、買ってみた
 
少女は思った
 
大人ってなんだろう


自由詩 うまい棒のチーズ味 Copyright 柴田柴助 2007-04-15 14:49:42
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