加速するマンゴー
ブルース瀬戸内

マンゴーが坂道を転がっていきます。
南国の坂道をマンゴーが転がっていきます。
坂道の先に見えるのは珊瑚礁を誇る海です。

マンゴーが加速して転がっていきます。
海の薫りで辺りは満たされています。
逆に言うと辺りは海の薫りしかありません。

マンゴーのスピードは一気に上がっていきます。
疾走するマンゴーは秩序を飛び出しそうです。
海が近づいてきます。
太平洋なのか、大西洋なのか、はたまたインド洋なのか。
海にしてみれば、
マンゴーが驚異のスピードで接近戦を挑んでくる状況です。

坂道がいよいよ終わります。
マンゴーが会心のジャンプをします。
時空を越えそうな勢いで
マンゴーが海へ向かって飛び出します。

宙に浮かぶマンゴーはその瞬間、生涯のピークを迎えます。
完熟したマンゴーの実は太陽のように宙に浮かんでいます。

ここで時間を止めます。
生涯の絶頂の瞬間に時間を止めます。
もう一度絶頂を味わうために時間を少し巻き戻します。
間違えて早送りします。

マンゴーは音速で海に飛び込みます。
波紋が音速でマンゴー型に広がっていきます。

海は静かに時間をかけて、
マンゴーとマンゴー型の波紋を飲み込みます。
珊瑚礁にオレンジ色が増えます。


自由詩 加速するマンゴー Copyright ブルース瀬戸内 2007-04-11 00:04:03
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