桜、炎上
橘のの



 *



花は
斜陽に灼かれ
  焦がれる音色、



ぐすぐすと、

春の夜の匂い



 *



散りながらも、
  果て知らぬ増殖




 化け物め



 *



手を振る者のあはれ、


 ふり向く な、

   癖になって
    止ま らん  ぞ



 *



いろはにほへど
ちりぬるを
わがよだれぞ

つねならむ



 *



桜舞台の影に、
   またひとり



踊り子の顔はもうない



 *



花散って
火の粉、舞う

断末魔のやうな風のこえ



 *



 満開



その樹の下で
女がなにかを探している

乱れ髪もそのままに、
花びらを掻きわけながら、
祈るかの姿で



やがて、
降り積んだ花骸の中、
何かが指に触った



 *



 般若の頭蓋




跪いたまま、
花びらを指先ではらい、
女はそれを愛でて抱きしめた



折しも斜陽の刻

その姿は
灼かれるようであり、



白髪に変わろうと
血や肉が絶えようと
いつまでも
女はそこにいるのだった



        *




自由詩 桜、炎上 Copyright 橘のの 2007-04-10 16:53:05
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