詩友への手紙 〜私達は草原の旅人〜 
服部 剛

 皆様今晩は。今日はあなたにとってどんな一日でしたか?僕は昨
日の日記で言い忘れたことがありました。昨日「サンジャックへの
道」を見た後に映画館を出ると、館内から出てきた見ず知らずの人
々が、映画の中で旅を続けた仲間と同じように親しみを感じる不思
議な気持になりました。映画館の外に出て街を歩く見ず知らずの人
々も、本当はどこかで自分とつながっている・・・そんな感覚にな
りました。 

 一つの素晴らしい映画を見ることで人生が変わり得ることを、僕
は今日、感じました。昨日見た映画のスクリーンの中で、スペイン
の聖地・サンディエゴを目指し、草原の道をどこまでも共に歩き続
ける仲間達・・・昨夜映画館を出てから僕の周囲には、常にその草
原が広がっており、日常で出逢う一人ひとりの人と共に、この人生
という旅を歩んでいる感覚になっています。 

 今日の日中は、職場の老人ホームで時間を共にするお年寄りの皆
様と、職場の仲間と、たった一つのゴールを目指して共に歩む気持
で過ごすことができました。 

 昨日見た映画の中で、旅の始めではまだ仲も悪く、中にはひねく
れ者や勝手な者もいた仲間達が、旅を続けるにつれて心を一つにし
て、ゴールの聖地・サンヂィエゴに辿り着いた時、皆で抱き合いな
がら、言葉にならぬ喜びに声を上げていた。

 僕は最近気力も失せた日々を送っていたけれど、本当は誰もが旅
人であり、「いつか辿り着くゴールでお互いに抱き合いながら、喜
びの声を上げる日」・・・その日の為に皆で歩き続ける・・・それ
がこの人生の本当の幸せであると、今日感じることができました。   

 そんな、昨日観た素晴らしい映画の話を今日の午後はお年寄りの
皆様に話すと、よく頷いて聞いてくれて、「伝わった」と感じるこ
とができました。 

 つまり僕は今、この手紙を読んでくださっている あなた と共に
草原にどこまでも伸びるひとすじの道を、歩きたいのです。旅の道
中では、よく晴れたすがすがしい日もあれば、大雨でずぶ濡れの日
もあります。もちろん あなた の人生と直接共に歩くことはできま
せんが、日々出逢うそれぞれの あなた と僕はこの道を共に歩みた
い。いつか必ず訪れる「喜びの日」を目指して。 

 今、この手紙を書いている僕と読んでいる あなた の周囲には、
昨夜の映画館のスクリーンに映し出されていた草原が広がっていま
す。それぞれの人生の重荷を背負いながらも、「いつの日か辿り着
く、言葉にならぬ喜びの日」を目指し、この道を歩く私達は旅人で
あり、仲間です。「サンジャックへの道」という映画は、そんなメ
ッセージを伝えてくれました。僕は、日々出逢うお年寄りの皆様と
職場の仲間と、この旅路を歩いていきたい。そして 詩 を通じて出
逢う人々と、この旅路を歩いていきたい。 

 毎月第3日曜日の「笑いと涙のぽえとりー劇場」は、そんな「人
生の旅人達」がBen'sCafeという場所に集まって、それぞ
れの旅の途中経過を「調子はどうだい・・・?」と語り合う「世界
の何処にも無い詩の夜」です。日々の喜びも悲しみも、一つの夜に
集う仲間達でオープンに語り合う、そんな場をつくりたい。人それ
ぞれの想いをこめた 詩 というものが、それぞれの心と心を結ぶも
のであることを、僕は確信している。 

 草原には、全ての旅人が重荷を降ろして木陰に憩う、一本の木が
ある。そこでそれぞれの旅人は、愛読書の詩集を一冊開き、それぞ
れの詩情に、想いを馳せている。誰もが幸せそうな顔で語り合い、
くつろげるような木陰をつくる大きな木を、ぽえとりー劇場に参加
してくださる皆様と共に、じっくり時間をかけて育てたい。そんな
夢の木を あなた も皆と共に育てませんか?「笑いと涙のぽえとり
ー劇場」は、毎月第3日曜日です。 


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散文(批評随筆小説等) 詩友への手紙 〜私達は草原の旅人〜  Copyright 服部 剛 2007-04-09 21:53:25
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