真夜中2時、壊れ方の手引き
三架月 眞名子

嗚呼
やっぱりアタシは愛されてなかったのね

溜め息深い午前2時

そんなことはない
そんなことは分かっている
でも今は
孤独を感じたい
無理矢理感じたい
どうしようもない寂しさに逃げ込みたい
アタシは独りなんだという
甘い甘い痛みに
さぁ溺れてみよう
さぁ浸ってみよう

おもむろに電気窓を起動させ
まずは暗い曲を聴く
その後とびきり明るい曲を
それがアタシのカオスのスイッチ
2つの温度差に
気分はどこまでも下へ下へ
そして一番底にある
過去の扉を抉じ開ける

鳴り出すオルゴール
映りだすモノローグ
観客は一人
ただアタシ一人
だってこんなB級映画
誰が見たいと思うだろう
作者の主観で捻じ曲がったシンジツ
カメラの不具合で捩れたジジツ
眩暈が襲う
吐き気が襲う
それでも見続ける
だって
何度見ても
結末が覚えられない
辿っても
手繰っても
途中からは無音の砂嵐
今日こそは覚えて帰ろうと
重い頭を押さえて凝視

映画はとうとうクライマックス
思わず前のめり
気張って中腰
それでもどこか及び腰
ヒロインは指差す
その先にあるもの
その先にいる人・・・

すると突然けたたましいベルが鳴る
劇場はすばやく暗転
画面も刹那に消滅
暴力的に奪われた結末
そうだ
いつもこうなんだ
まだ帰りたくない
まだ孵りたくない
なのになのに
体は浮上に抗えない
深い闇と静寂は
急速に軽さを吸収していき・・・


目を開けると眩しい光
煌々と点る電気窓
埃の舞わない静かな午前6時

薄れゆく記憶と
確かに残る倦怠感
でもアタシは戻ってきた
変わらず進むこの日常

学校に行かなきゃ
授業を受けなきゃ
人と会わなきゃ
テキトウに掴んだジーンズに足を押し込み
顔を洗いに洗面台へ

耳に響くは
確かに刻む時計の針
高々と囀る小鳥の声


自由詩 真夜中2時、壊れ方の手引き Copyright 三架月 眞名子 2007-04-09 02:58:33
notebook Home