アルマジロに花束を
ロカニクス

地図の上に鉛筆を立てて
転がった位置まで歩いてみると
道路の真ん中にアルマジロがいた

それから早幾年月
アルマジロの実の弟
ジローに出会った
普通の人間の形をしている
折り目正しくスーツを着ている
あのときは、兄がお世話になりました
と深々とお辞儀をする
兄のアルマジロは道端を行く人を見ること
弟のジローはその人たちにお礼を伝えることを
日々の糧にしているらしい
私は思わず最愛の人に贈るはずだった花束を
これ、お兄さんに
と差し出していた

そうして更に年月は流れ去り
結局私以外に
あのアルマジロに出会った人と
あのジローにお礼を言われた人の話を
聞くことは無かった
今となっては花束も道程も
用意することはできないけれど
心の中のものを思いっきり束ねて
そっともう一度捧げよう


自由詩 アルマジロに花束を Copyright ロカニクス 2007-04-07 13:47:11
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