La muerte del Angel
Utakata
肩に
親指の長さほどの白い翼が生えた
痛みもないままに裂けた腕の付け根の皮膚から
いたいけな宿木のように真っ白な
細い翼が咲いた
ともだちのはなし
ビルの切れ目に見えた曇り空から
白い羽根が降るのを見た友達の話
(はじめのうちは
誰かが白い紙屑でも撒いているのかと思ったのだそうだ
コンクリートの壁から浮きあがった染みのようなそれは
とても羽根には見えなかったのだそうだ)
無関心を貼り付けた顔の中から
たまたま上を向いたその子の姿を見つけたように
羽根は、あるいは羽根のようなものは
思わず伸ばした手の上に音もなく乗る
掌に収まるほどの小さな白の付け根にはまだ粘り気のある血が付いていて
近くで見た羽毛の上に無数にへばり付いた不定形の染みは濃い褐色で
それは都市の隙間に滑り込んできた
腐りかけの羽根
その子はやさしい子で
嘘のようにいつだって浮かんでいる滑らかな笑みで
水銀灯を浴びた夜の地下道の中で
薄いシャツなびかせていつも踊った
いつも踊った
肩口に咲いた白さの揺れる
痛みさえないまま裂けた腕の付け根から生えた
細い羽根にそっと触れれば
微かに懐かしさにも似た痛みが走った
まるで嘘みたいに笑っていたんだ
そんな友達の話をふと思い出した
天使になんてなれる筈ないと
笑いながら嘯いたその子の話
紙屑にも似た天使の羽根を
腐りゆく羽根を
手の中でずっと包んでいたその子の話
水銀灯を浴びた夜の地下道の中で
薄いシャツ靡かせていつも踊っていた
いつも踊っていたその子の話。