森
サナギ
気がついたら
目の前に森があった
そうとうぼんやり歩いていたらしいが
もしかしたら忽然と姿を現したってやつかもな
とにかく入ってみる
ほとんど光の入ってこない
真っ暗な森だった
地面はじめじめとして
霧が立ち込め
なんか怪しいものが出そうだ
木の根元を見ると
小さな鳥がいるが
みな息絶えている
森の奥の方から歌声が聴こえてきた
か細く震える少女の声だ
子守唄のようだ
しかしなんとも物悲しい
しばらく歩くが
木の他には何もない
歌は続いている
やがて巨木の前に出た
歌はそこから聞こえてくるらしい
あまりいい感じじゃなかったから
そこを離れた
どんどん歩いていると
頬に何かが流れた
なみだ、だ
俺はびっくりしたがどうにも止まらず
そのまま流れるにまかせ
しまいには盛大に嗚咽しながら歩いた
その暗い森にいる間中
俺は
泣きながら歩きながら泣いていた
その間中
何故だか知らないが
背中の墓標が妙に軽かった
やがて涙も涸れた頃
森を抜け出ていた
後ろを振り返ったが
何もない
何だったんだろうか
分からないが
涙が必要な時もあるってことだろう