四月の綺麗事
れつら
四月の一日から友人夫婦の修羅場に呼び出され
よくわからないままに俺も怒鳴ったり泣いたりして
俺なんてなんの関係もないのにね
かえりみちで
ずいぶん簡単なことで幸せになってしまえるひとたちを
うらやましく思ったりした
今できることは せいぜい
煙草の吸いさしを草むらに放ったり
夕立に落ちた花をふんづけたり
そんなもん
コンビニにはビールがあって
自販機にはジュースがあって
でも煙草は売り切れで
ぺっかりと赤くともる文字
それがもしかしてなにか 幸せになるための注意書き
だったとして
うちに帰ったらお湯が出なかったので
春だからあたたかいものはそこらじゅうにあふれてる
蛇口から垂れる水はつめたい
でもぼくはそれよりもっとつめたい
なんちゃってで全部済ませたい
どこかにうつくしい、とてもうつくしいひとがいても
簡単な修辞で飾り立てたい
そしてぼくのことは終わりにしたい
きみたちがかってに生きていくのがいちばんいい