いろめがね
R


たとえばね、このレンズ越しに見える世界が愛に溢れているものだとして、
世界の境界線が濃くなっていくから
この空の青だとか
花の薄紅だとか
草木のざわざわりとした、
鈍い銀がった緑とか
そのなかにいるきみのその顔の輪郭とか

そういうもので世界の微熱があがっていく気がして、
きみの手をぎゅっと握ったあたしの手は
きっと少し汗ばんでいるに違いないんだと思った。

そう、たとえばこのレンズ越しに見える世界が愛に溢れているものだとして
そこから見る君の顔がやさしいのならば、
色眼鏡というものはあたしにとってずいぶんとやさしいものに違いないんだ。

これはあたしのいろめがね。
これはあたしの潜望鏡。
閉ざされた世界でも、
ちいさく、望む、ひそやかに。
春の微熱。きみのてのひら。




自由詩 いろめがね Copyright R 2007-04-01 19:04:29
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