かなしみ
たもつ
亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい
+
かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている
+
カンガルーが直立したまま
波音を聞いている
尻尾の先には
民家が一軒ある
+
かなしみに似たものを
鍋に入れて
静かにあなたが
味噌を溶いてる
+
カーテンが風に
なびく
島根県の
皆川さんの八畳間で
+
カナカナが
鳴き始めた
親戚のおばさんは
ミンミンゼミが、と書いた
+
かなしみ、と
名づけられた海を
白いゼッケンをつけた父が
道と間違えてどこまでも走っていく
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アクロスティック