少年少女/まわる星
石田 圭太
ある
ありふれた
想い
という
呼び名の比喩が
争え
という
プログラムの元
生まれて初めての出航をし、
次の刹那
辿り着いた先が
温かい
実は
腹の上
だったと
結局
何もかも
知らされないまま
終わった。
という
話を
+
そこに
全てがある
という
少年の言葉に法り
少女は
考えうる全ての夢を
一つの鞄に模倣した
窓から
かみひこうき二つ
飛ばして
一つの未来を模倣した
馴染みの坂を
下って
いく
+
少年少女が
覚えたての言葉で
愛を
模倣した日
両親は
言葉にならないものを受け取り
言葉を失って
涙で
模倣していた
+
男と女
を意識する
少年少女の
初めて
模倣したそれは
ただの痛みで
喜びないものが広がり
声になり
別れを
模倣していった
愛は
始めからなかった
やがて
他の少年少女に出会い
知った
+
少女の
肩を叩く
少年の
指先から始まる
広大な
緑の平原
むせるほどの
春の匂い
模倣の宴に
少女は
歓声を上げて
少年も
わーっ
と
それを
模倣した
鞄の中身を
広げ
合って
嬉しい
嬉しい
と
話し
合った
気持ちいい
気持ちいい
と
許し
合った
草花も
すべからく
生き物はその輪から
もれることが
ないように
と
夕暮れに
攫うような風が吹いて
さくらの花びら
千切って
飛ばした
駈けていくのは
ハミングバード
その尾先の
光を追って
夜が孕んで
消していった
今日は
幾つが結ばれて
幾つが
+
向かいあって眠る
喪失していく何かを見つめる為に
解いた指で契りを数えて
くの字に曲がった二人の跡を
詩と名付けた
あの
朝の話をしよう