無情の大地へ
渡 ひろこ

何が起きたのかわからなかった
地鳴りと轟音とともに
その瞬間
すべてを失った
激しく燃えさかる炎と
黒煙の中
太陽は赤く揺らいだ


衝撃と
悲しみと
脱力感の中に
いた
茫然といた
人間として極限の
痛みの中にいた


うめき声
泣きさけぶ声
助けをもとめる声
声なき声
声・・・それは
螺旋状にあたりに渦まいていた


「プレートとプレートがぶつかって・・・」
どこからかラジオが聴こえる
絵空事を語るように
頭の上を流れていく
無機質な音声が
凄惨な現場を通過していく


そう・・その通り
無情なプレートがエネルギーを勝ち得ていった


人間は大地に生かされ 殺される


それでも


肉親を失い
家を潰され
希望を砕かれても
それでも人々は生きる
物を食い
排泄し
眠りにつき
明日を思い
生きていく
生きていこうとする


大地よ 見ているがいい
この凄惨な現実の中
我々は
這いあがる
産み出す
そして


再生する
































自由詩 無情の大地へ Copyright 渡 ひろこ 2007-03-31 00:50:36
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