お題/昼食のメニュー
茜井ことは


言葉をその形のまま
受け取れない僕は
苦しむことがない一方で
君と同じくらいには
生きにくさを感じていたりするんだよ
そういえばいつか
「医者は美味しい物ばかり取り上げていく」と
目玉焼きに醤油の海を作りながら
僕のおじいちゃんが、こぼしていた


それを一緒に笑いながら
見つめるだけだった僕は
その醤油の一滴一滴が
毒薬ではなければ
今すぐおじいちゃんの命を奪うものでもないと
知っていたのに
本当は、不安で、



ねぇ、君
どうして自由なんてのはいきなり
束になって転がり込んでくるんだろうね
人間っていうのはさ
本人でさえ分からないような些細なことで
傷付いて傷付けられて、それに気付かずにいて
だけどしっかり
失望は心で育んでいく
そういう生き物なのかもしれないな
だから、君を知り尽くすことを諦めても
君が痛みを感じるできごとは
僕のそれとは違うんだと
僕は決して忘れるべきではなかった


誰かを失った夜には
ひとりで泣きながらこう思うんだ


涙を流してばかりの僕も
おじいちゃんのように死んでしまうかもしれない
脱水状態に陥るか
やっぱり塩分の取りすぎで






自由詩 お題/昼食のメニュー Copyright 茜井ことは 2007-03-30 22:04:55
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