私の屍を越えていけ
野火 後里

無数に転がる背中のひとつ覗きこんだ
浮き出る黒いあしがた
誰かが一度
踏み潰したのだろうね
いや
踏み越えていったのかな
ああ
そうだったらいいな

「制止も聞かず走っていった」
なんてそんなこと
あるわけないじゃない
あなたの声なのに

拒み続ける世界をよそに
受け入れる者たちが生まれ出す
「止められない」
なんてそんなこと
考えつくこともないわ
「逃げられない」
それはまあ
よく思うことだけど

時間は回送を始めて
私はまたも乗り過ごした

無数に連なる山並みのひとつ覗きこんだ
沈み込む本日
ボンボヤージュ!
今日も昨日もまたあした

ね、だから
だからいつかさ
私の屍を越えていってね


自由詩 私の屍を越えていけ Copyright 野火 後里 2007-03-30 20:42:13
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