京浜工業地帯
曳舟

学校を抜け出して
坂道を下ると
線路のあたりから
かすかな潮の匂い
遠い浜辺へと
心を急かせても
水面を見る前に
五時間目の鐘が呼ぶ

走れ走れ
さよならのために
さっぱりわからない
数?Cのために


今月からの席は
窓際の真ん中で
広がるふつうの向う
かろうじて海が見えた

走れ走れ
今朝からの空腹
ぬぐいきれぬ悲しみ
それらのために

遠い浜辺へと
心を躍らせて
柔らかい上履きで
アスファルトを蹴って

立ち止まるくらいなら
死んでしまえと
横断歩道で
叫びながら


走れ走れ
これが敗走であれ
まだ見ぬ浜辺を
確かに信じて

さよならのために
わたしは走る


自由詩 京浜工業地帯 Copyright 曳舟 2007-03-30 00:03:11
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