春の寂光
沙門


君がゆび
我の背にそう
ゆびさきは
紅蓮の業火に
路をとくまで


君が肌
我にぞ白く
映りなむ
まなこにとどめむ
淡き面差し


さくら待つ
朧にかかる
しらつきも
仄かににじむ
きみがかんばせ


音もなく
さくらはなびら
流す河
紅き欄干
朧にかすみ


ほの紅く
ふくらむ想ひを
綴じ込みて
花散る季を
いまに待ちわび
陽にむかう


月を詠みなむ
あの日こそ
真白き花の
面差し




漂泊の
川面に流るる
散りばなに
まなこを落とし
眺むるは
歩き疲れた
薄墨の
想いを映す
万華鏡

ひとひら ふたひら
あたたかく
薄く蒼い
頬かすめ
冷たく振るう
肩を抱く

失くしたはずの
想いでは
淡き
血潮を
流しこし
濁れる川面に
あだ花映す

ひとひら ふたひら
舞い積もる
真白き路の
散り敷くは



仄かに温む
身を抱き
闇路の褥





短歌 春の寂光 Copyright 沙門 2007-03-29 03:31:28
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