予感
緋月 衣瑠香

ずっとずっと遠くで波の音が聞こえたような気がしました
それが耳鳴りのように鳴り止まないのです

あれはいつのことだったのでしょうか
広い空の端っこに灼熱の太陽が半分だけ沈んでいます
そして海風が吹いたのです
それは神の吐息のようで私は胸がつまるような思いでした

頭の中の思い出のアルバムが音を立てて捲れ上がりました
透明なアルバムは何かを感じ取ったかのようにぴたりとあるページで止まりました
さて、いつの写真でしょうか
黒く焼けた素肌に白いワンピースで微笑みかける私
後ろには息を呑むほどの、青い海

押し寄せる潮騒
潮の匂いが鼻をくすぐっていました
私の胸を不安と期待とで躍らせるのです


これは私の音でしょうか
それとも海の音でしょうか
今、共にリズムを刻んでいます


自由詩 予感 Copyright 緋月 衣瑠香 2007-03-28 21:45:41
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