ひとつ さざめく
木立 悟
空から下がる紐の影が
円を描いて泳いでいる
姿かたちの失い生の声
幾度も土へ打ち寄せる
源を抑える手は緩く
光も水も渦巻いている
したたり落ちるもののなかに
灰と緑の息がある
さかさに揺れる
雨まじりの言葉
ひとつの器 ひとつのしずく
空と応えに満ちてゆく
かたちとかたちの婚礼
雪の上の枝影
細く静かな血脈
果てることを知らない
衣のなかのふたつの光
降りはじめた雨を見つめ
唱い奏でる指に震え
衣からあふれる五つの光
騒がしい空の鏡には
無言の影と言葉が踊る
灰と緑は止むことなく
水に水を咲かせつづける