空気見てるみたいに音の中に
水町綜助

たかいとてもたかいところで
鐘が鳴って
響いてふるえ
始まったんだろ
どんどん共鳴して
音があたるから
どんな形かわかって
反響して
わかってきて
まだ目もひらいてないけど
柔らかい手で
おそるおそる触れて
それでなにかよくわからないよ
いまでも
でもどんどん出来てきて
好きになって
興味もなくなって
死ぬけど
それでもどんどんうまれてふえて
また同じことやって
そりゃ泣くよ
ふるえてんだから
目も光しか
みんな
暗いとか明るいとかしかわからないから
ぜんぶ見えないよ
色だって
綺麗だよ
でも意味ないよ
いやわからないよ
俺には
わからないけど
たぶん意味ない
そんなに
みんな

蜂がさ
泥とか
枝とか
葉っぱとか
拾ってきて巣を作るでしょ
卵を産んで
餌とってきて
育てて
また蜂になって
黄色い蜂
とんで
そんなの見てて
これってそんなにって
思うときが
ある
そのずっとずっと先って

不思議だったけど
ひょっとしたらなんにもないかもしれなくて
ただそこにあるだけで
悪意も善意もなくて
ただそこにあるだけで
花だってそうだよ
咲いてるだけでしょう
きっと
おれたちが悪いんだよ
すぐに探そうとするから
なにもなくても
ない気がしてても
むりして見て
なんか見つけた気になって
その逆も
失ったとか
奪ったとか
空気を取り合ってる
だからさ
きっとそれでも
なにかはほしいから
ほしがりだから
きっとぶつかるよ
どこまでも
いつまでも
それでたいてい壊れるし
破片がからりと
こなごなで
落ちて
夕焼けだけが照らして
長い影が伸びて
さみしいよ
そりゃ
その影はなににも触れないから
でもさ
おれは
その
あたるとき
硬いものと硬いものでもいいよ
やわらかいものが潰されるときでもいいよ
こぶしがもっと硬いものにぶつかるときでも
蜂の羽が羽ばたいて空気に当たるときでもいい
生まれた家の物置に落ちてたアメリカンクラッカーの
赤い玉どうしがぶつかる瞬間でも
車のバンパーがガードレールにぶつかるときでも
なんなら太陽が海に沈むときでもいい
その瞬間に
うまれた
音の中に
生きていればいい

こどもの欲求にこどもの欲求があたって
かなえられなくて
だだこねてる
またはお互い疲れ果てて
ぐったりしてる
もうとりあえず休もう
先なんてみえてないけど
ちょっと眠ろうよ
気づかなかったけどだいぶ暖かくなってるし
あいかわらずなんにもわからないけど
日が当たるから
すこし横になろう
なつだってそんな遠くない
そうしたらまた遊ぼう
考えよう
遊びながら考えよう
わからないかもしれないけど
たぶんすこしも進んでないかもしれないけど
さいごまでわからなくても
それでいいから

何度もぶつける
ふとしたその願望に
的っ外れでもあてる
それでどんなだか音が鳴って
音が鳴って
いっしゅんとまって
その音がひびいて
反響してる中に
たわんで
いきて


































自由詩 空気見てるみたいに音の中に Copyright 水町綜助 2007-03-27 15:31:14
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