月のように生まれることもなく
たりぽん(大理 奔)

なにげなく息苦しくなる
自由に生きるとわがままで
いい人でいると酬われない
狭苦しい海だね、まるで
しおからいもので満たされて
泳ぐためにも浮くためにも
そして沈むためにも
抵抗や圧力が必要で

   もしも生まれ変わったら
   もっと素敵な人生を歩むのだと
   お母さんを幸せにするのだと
   あの日も海の味で

波間に浮かぶ中途半端な
揺らめき映る月のように
あんなふうに漂いたくて
波打ち際を走ってみる
あの突堤まで
砂の抵抗で息が
胸が苦しくて深く
吸い吐く息

   あいつを許さないよ
   もしも生まれ変わったら
   僕がお母さんを守るのだと
   あの日も砂の上で

胸が波のように、迫って
裸足のままの、めまいが
私を引き倒す
髪を洗う しおからいものが
体温をすこし奪って
思い出す
生まれてきたのだということ

   そうだね、生まれてきたのだね
   あなたから
   生まれ変わるのであれば
   あなたからまた
   でもあなたは
   幸せだったと、この人生はと

息苦しくなる、それは
生まれてきた証、あなたから
もういいません、残酷な
生まれ変わりたいなどという事は
この苦しみも、憎しみも
波のようですね
砂のようですね
しょっぱいものも、生きることも
息苦しくさせる、すべてのものも
わたしを引き倒して
思い出させる
すべて

あなたから生まれた
すべて、だから




自由詩 月のように生まれることもなく Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-03-26 00:42:58
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