月夜の木陰 
服部 剛

夜空を指す 
背の高い木の枝先に引っかかった
宛先の無い
青い封筒 

何処にも届けられぬまま 
あやうく風に揺れている 

( 無闇な言葉ばかり、こぼれ落ちていた。
( 胸の奥をかきわけ、しみわたる、
( 君の心をひからせる、言霊を手にできず 
( 月夜の木陰に腰を下ろした僕は、
( 見上げた月に話しかける 

届くことの無い手紙をのせた 
夜空を指す枝先は震え 
枝々は全身を風に揺すって 
独り木陰にたたずむ僕に 
今夜も優しい唄を奏でる   

( あの青い封筒には 
便箋びんせんつづられた不器用な文字列 
( 行間に染みた涙の跡 

見上げた枝先に 
あやうく揺れる、青い封筒。 
( うっすらひかりが、すけていた ) 





  * この詩は「詩遊人たち・2」(詩遊会出版部)の 
   表紙の絵( さちさん・作 )を参考に書きました。 





自由詩 月夜の木陰  Copyright 服部 剛 2007-03-25 21:48:08
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