ホーム
ひろっち
ここには居場所がないけれど、
実はどこへ行っても居場所はなくて、
探して見つけられるようなものならいいけれど、
そんなんじゃなくって、
田舎の土の匂いがしない砂利道で、
掘っても掘っても砂利と砂の入り混じった、埋立地のような土台に足を点いて、
浮き足立った嫁のスニーカーは、
帰る場所を闇雲に探し続けている。
喧嘩すればいつも飛び出して、
いつも不貞腐れて帰ってくる。
東市来の山なみはここにはなくて、
ドコモの携帯が繋がらないこともなければ、
カエルの騒音で眠れなくなることも先ず以ってない。
ここには居場所がないから。
いつもそうやって飛び出して、実家に帰る素振りを見せて、中途半端に姉ちゃんのところに滑り込んで、
結局、俺が謝らんと収拾つかん次第。
眠れないのは昔から。
けれど昔はよく寝てた。 眠れないのは、土の匂いがしないからで、
夕日が沈む。
退屈な速度でゆっくりと沈んで行く。
土の匂いがしたところで、
そこが居場所になるわけじゃないし、
結局、何やかんや愚痴垂れたところで、
どうにかなるわけでもあるまいし、
そんな走馬灯を描けるこの対峙こそが朱美のホーム。
君の居場所。