ミサイル
ae96




        「 ミサイル 」


        
        どこかの星の片隅から

          ボタンひとつで 

           とびだしたよ

          

          青い空と白い雲を

            引き裂いて

           飛んでゆくだけのミサイル


          海の向こうの平和の街で 

            誰もが明日を望んでる



        目標物まであと一万キロメートル

          誰もが自分に夢中で

             想いを描いている


             ねぇママ 

          今日学校で写生大会があるんだ

       僕 青い空 と 白い雲 の絵が描きたいな



       目標物まであと八千キロメートル

         誰もが自分に夢中で

           自分を守っているだけ


           ねぇママ 

         明日はママの誕生日だね

         僕 空の絵をプレゼントするよ

        だから僕のときには超合金買ってね



        目標物まであと六千キロメートル

      橋のうえで恋人たちがケンカをしてる


     あんなこと言うつもりじゃなかったのにな

         
          明日 俺から謝ろう 

          仲直りしたいよ ごめんよって



       目標物まであと四千キロメートル

       
         

        静かな風がタンポポを揺らしてる


       

        目標物まであと三千キロメートル

         


          タンポポの種は

           やがて海を越え

            根を張らすだろう

             そしてまた

             種を飛ばすだろう


        
        

       目標物まであと一千キロメートル

 
          
       空き家の軒下で子猫がうまれたよ



      
         目標物まであと五百キロメートル

         

           少年の画用紙に

         青い空と白い雲が描かれている



       目標物まであと百キロメートル


      空と雲のあいだにキラリとひかるミサイル



       目標物まであと十キロメートル

       なんだろうあれ きれいだな

     そうだ 絵に描いてママにもみせてあげようっと



        目標物まであと五キロメートル

         少年の絵の中で光るミサイル



       目標物まであと一キロメートル

      誰もがただ理想を追いかけているだけ




        目標物まであと五百メートル

 
       せみの最後の鳴き声が静けさにこだまして





         目標物まであと百メートル




          目標物まであと十メートル




          目標物まであと一メートル


        幸せが突然きえることってあるのかな


           どこかのだれかがひとりごと




          目標物まであと


         一センチメートル





        子供たちは わらっている







         目標物まであと

            一ミリメートル




            平和の街は  


              まだ   

             
              平和のままで





自由詩 ミサイル Copyright ae96 2007-03-24 22:40:12
notebook Home 戻る