目撃者の真昼
モーヌ。




ねぼけ まなこの アトリエ

いっぱいに 陽光は 満ちて

画布には 旋律から 対話への

やがて ひとつに 見える 道が 伸びる

( それは きつねの なの? うさぎの なの?... )

小さいが はっきりと した

あしあとを こわさないように

きょうは 何故か 誰にでも やさしい 語らいを

繭の ような ぼくは

踏むたびに ファイヤーバードを かさねて

あしおとと 響きを 編む...

時を さかのぼる 錯覚の

インヴェンションの 白い 砂粒が

やわらかく ふぶいて

...ふぶいて





そして 通って

故地を さぐって

ねこが あくびを

里山に 乾いた あおい春が たむろ して

ひびのはいった 石の ほとけが

まなこに 星を 裂いて あたたか なのは

誰かに 添えられた

野花たちの 唄のせい だったから でしょうか...

幾年いくとせも 見つめるだけの 視線は

さえずりはじめた 葉むれを めぐる

ひかりの 彩の なかで

微塵と なり 過去と 思おうとした ひとと

とめどなく あふれて

必要と される 確かなもの へ

めざめた 小さな声を ふるわせた





暗室の 時計が 時を 打つ

きみの ことで 部屋 いっぱいに

息を する エコーの 肉体は

あの 小声へと 澄んで ゆく

田園の 悠久を 描いた タブローの 隅で

ほほえみも なしに 話も しない

呼吸の とだえた 日々 ある日

口笛の メロディーを もどすように 綴り

さわめく 林野を 透過する とき

その うえに

在るのなら たましいで なければ

触れえなかった 静けさの うずまきを

旋律が 流れて 唄へ と 溶けて ゆきます

発声へ とぎれる ゆくえを 転身します

唄も なく

ひとが いなければ

石でも 木でも 花でも 鳥でも 抱きしめたく

不実として 過ぎゆくしかない

病んだ 街の ような

きみに なかった ものの 鋳型に なろうと

たましいに しか わからなかった

無言で 感じる しかない 想いを

かたちに かたちに かたちに

なるまで

祈り ながら...














自由詩 目撃者の真昼 Copyright モーヌ。 2007-03-23 11:48:10
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