冴ゆる氷菓
茜井ことは

風鈴の音の鋭さを
緩和できなくなった空気の中で
アイスキャンデーを口に含むと
腕に痺れが走った後に
鳥肌が立った
こうなると
揺れているカーテンの音に時々混じる
遠くを走る車の気配のまばらさに
センチメンタルの小夜嵐が
吹き荒れずにはいられない


濡れていくアイス棒の
湿った木のにおいから
教室の床をフラッシュバックする
こんな風にして僕らは
いくつかある日常のパターンを
切り換えていく準備をするのだろうか
最近はあまり思い出していなかった君を
まるで義務かのように
埋めにくい小さな時間の隙間に
当てはめる、それはそれで愛しい日々に


好きなものはたくさんあった方がいい
どれにも同じ強さで
興味を注ぐよう、気を付けられさえすれば
きっと明日からはますます
氷菓は食べにくくなっていく




自由詩 冴ゆる氷菓 Copyright 茜井ことは 2007-03-23 00:44:00
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