ワインレッド
たね。


濡れた逢瀬の
赤い林檎を拾った

こぼれた赤ワイン
仄かに染み色めく
背筋のほむらを冷やす
残照

去りた時計が奪う
くちづけ色は
おもいでがよく冷えた
葡萄酒の夕暮れ

流れゆく時空の
ルージュの皮膜を追い
穏やかな湖畔の
追憶のこぼれ水を
月面から酌んでいる
おまえ

眩暈を慰むる陽は
帰り道を
忘れたかのように
東雲に背をむけ
俺の
心臓だけが沈んでゆく


ああ
微かに染み色めく
夕影の
蒼い日々を馳る紫よ


やがて、渋い林檎を
齧る夕凪は
夜に滑りだす銀のグラスに
もう一度
おまえの名を浮かばせ
オリオンの純度を注ぐだろう

今夜はそれを
静かに呑もうと思う

切なき星が注ぐ
ほろ苦き赤い酒

俺はソレに口をつける
いや
つけねばならぬその前に


おお
ワインレッド


おまえの
血のような
夕陽を呑みほそう



自由詩 ワインレッド Copyright たね。 2007-03-22 15:07:23
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