いつか空から幸福が降る
銀猫

春の気配に恋、を思えば
こころが羽根を持って
菜の花畑の上を旋回する


拙い愛情が
地球上のすべてだったあの頃に思いを馳せると
おぼろに陽炎は立って
咲き競う花の匂いが
わたしを空の懐ふかく吸い込んでゆく

瑞々しい若葉のしたで
くちづけを交わしたとき
薄目を開けた視界の端に
見て見ぬふりで咲いていた、
菫やシロツメクサを忘れていない

木漏れ日の模様が落ちた下草に沿って
ふたつの鼓動が同じ旋律を奏でるのを待ち
日常の大人を忘れ、ただ笑って戯れながら
ふたつの人生が重なるのを待つ
愛する、とはそういうものだと疑わなかった

初々しいパステルを選んで風景を描けば
ふたつの予感は融け合って
幸福のかたちが生まれる
希望、はそうして現れると
暗黙の理解を分け合った日


春だった


微熱の覚めたわたしがいる
わたしが、いる
けれど
いま、空からきみに逢いたい





自由詩 いつか空から幸福が降る Copyright 銀猫 2007-03-21 22:31:45
notebook Home