地下鉄十六番出口から
たりぽん(大理 奔)

風が吹き抜けるたびに
路地から空を見上げる
鳥の影、あの鳥がまた
飛び越えていくのかと

見上げた先の色は様々で
いつも、すぐ忘れてしまうから
黒い影だけは憶え続けるのか
鳥のかたちに切り抜く
吹きだまりに積もるちっぽけな夢も
あきらめなければ嘘にはならない

言いわけをおぼえても
風が吹き抜けるたびに
路地から空を見上げる
誰にも悟られてはいけない
コートのポケットの中で
汗ばむほど握りしめた手

鳥の影、あの鳥がまた
信じた風に乗って旋回する
そう思えたから見上げる
失ったものの歳を数えないで
意味がないなどと、数えないで
いつまでも、ほんとうだと
コートのポケットの中で
汗ばむ手は、言いわけじゃない



自由詩 地下鉄十六番出口から Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-03-21 00:34:31
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