つらなり短冊
千波 一也

記憶の糸は ここから近い


青葉とともに樹齢に添えば 
風の渡りがよくみえる

耳を 
やさしく奏でるように
静かなことばは 
紡がれて


  会えるひと 会えぬひと もしくは 会わぬひと


避けることをせず 
避けられも 
せず

確かな隔たりのなかで
それぞれに揺れて 
いる

あかるい午後をひとりずつ


  昔、愛したひとがいます
  昔、逆らったひとがいます
  昔、名をくれたひとがいます

  叶うのならば 
  いつか どこかで


指先を 
つたう流れは
願いの数をただしく乗せて

忘れることと 
留めることとを
同じく過ぎつつ透けてゆく


  記憶のすべてはむずかしい

  そんな語りの易しさに 
  季節と便りをすり替えながら


いつも近くにあるものを
いつでも遠くに
呼んでいる

つらなることを つらなるほどに






自由詩 つらなり短冊 Copyright 千波 一也 2007-03-20 11:04:43
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