街並み
海月

何も変わらない街並み
古びた家々の塀を猫が歩く
穏やかな陽射しが満ち
平穏の昼下がり

縁台から君の好く吸う
煙草の匂いがした
だけど
君はもういない

坂道を駆け出した子供の様に
私の手の届かない街へ

数年の月日は経てば短く
幼い顔立ちも大人へ近づく

魔女の魔法で優しく脆い約束
硝子の靴は脱ぎ堕ちた
それは叶わない恋の終着点
これ以上は何も望めない
君が私を探すのを待つ

思い出は戻りたい場所
現実と切り離された世界
いつも優しい終わり方

君と一つになり
心も身体も混ぜ合わせ
生まれた世界は愛

私の方が先に部屋を出た
怖さと後悔が輪廻した
薄暗い廊下が恐怖心を生む
家までの距離を走り去った

翌日、二日、三日
君は帰ってこない

一月、半年、翌年
夢は途中で静止したまま

何も変わらない街並み
ただ、その中に君はいない



自由詩 街並み Copyright 海月 2007-03-19 16:31:36
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