はじめ

 雪が解けたら君の街まで行こう
晩秋の夜に君と春までのお別れをしたんだ
 動物達は冬に備えて食料や栄養をたっぷりと蓄えていた
 植物達は短い一生の終わりに未来へと繋ぐ子孫を残していた
激しい雪が轟轟と吹雪いている
君は春になると天国から戻ってきて君の街で元気よく暮らすんだ
 僕も畑仕事と動物達の世話が終わると毎日のように君の街に通う
 でも冬になる前に 君は毎年のように天国へ帰ってしまう
 冬の間は 君は死ななきゃならないんだって
 君の街も冬の間は死んでる どの街とも繋がっていない
 何処にあるのかも分からなくなる
 きっと春から秋までの間は君の街は天国の代わりになるんだね
 反対に冬の間は天国が君の街の代わりになるんだね
 死んでしまった人間は必ず何処かに居場所がなければいけない
厳しい冬は 僕の想いを君の街で虚ろに彷徨わせる
全てが凍り付き 全てが埋まり尽くした君の街は一種の哀愁さえ感じさせる
 僕もまた 心を深く閉ざし 生気が無い死人のように過ごし続ける
 やがて太陽の光が出て 根雪が解けて 家々の屋根から水滴が滴り落ちる頃に
 君の街はようやく全貌を表し 川が奔流し 君が街に帰ってくる
 僕は君に会いに行き 僕達は挨拶代わりに強く強く抱き締め合う
 君は喜びでいっぱいの顔だ 僕も喜びでいっぱいの顔をしている
 僕達は咲き誇る花々や繁茂した草木が春の到来を祝福しているのを感じる
 空は蒼く澄み渡っており ずっと見ていると吸い込まれそうだ
 僕と君は暖かい草むらで横になって微笑む
 君と此処にいられる幸せ
 ずっとこれからも一緒にいたい


自由詩Copyright はじめ 2007-03-19 05:40:19
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