ルーレラ
ひろっち

はなさか爺さんのこぶは悪性の腫瘍だ。
だから喫緊きっきんに手術を要した。
けれど、爺さんは聞く耳を持たない。
聞く耳を持たないから、耳をナイフで切り取った。
赤いものがきれいに飛んだので、
爺さんを病院に連れて行った。
医師は先ず、耳の接合手術を行った。
納得いかないので、医師の後頭部目がけ、バールを飛ばした。
バールは見事に医師の頭蓋骨を貫通して、手は止まった。
拳銃を背中に押し当て、腫瘍の切除を具申した。
二人目の医師はこわばった笑みを添えて快諾してくれた。
こぶは直径5センチ程度でピンポン玉のようだった。
医師は許可なしに麻酔を顔面にした。
納得いかないので、医師を撃った。
返り血が顔面を覆った。
はなさか爺さんの顔面も真っ赤だった。
直接、自分の手で執刀することにした。
合理的だと思った。
ナースは逃げ出してここにいない。
メスをこぶに当てた。
と同時に、見慣れない格好の男どもに包囲された。


ルーレラ。


現実逃避の呪文。
とっさにはなさか爺さんの本を手に取る。


ルーレラ。


はなさか爺さんの耳はまだ接合されていない。
麻酔も切れていない。


自由詩 ルーレラ Copyright ひろっち 2007-03-18 01:43:55
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