スルメの人生
ひろっち

僕、スルメ。
昨日、天日干し完了。 あざ二ノ八のおばちゃんに取り込まれた。

一ヶ月前は、海の中。 比較的、浅いところ。
淡い思い出ばかりだ。

先ず、ブルーオーシャン烏賊味噌大会優勝。
正直、優勝できるとは思ってなかった。 中山子女の捕球が悪かったら恐らく優勝でいていない。 運も味方してくれた。

最愛の父、北別府とのキャッチボールも忘れられない。
イカす、イカさないはキャッチボール次第であることを結婚して初めて知ったのは事実。
人生、経験から学ぶことのほうが圧倒的に多い。

「同じ内容の会話を何回、抵抗なく繰り返すことが出来るか」技術認定試験の合格もひとつの転機となった。 タコとのギャップを目の当たりにして荒れていた頃だ。
馬鹿でも勉強すれば何とかなる。

悟りばかりの蒼い浅海の中でのひとコマ。

僕、スルメ。
いつも警戒はしていたんだ。
その日だって、たまたま御向かいの秋吉さんがハムステーキどうですかと言ってきたからであって。

僕、スルメ。
裂きイカにもなりきれない中途半端な時代の。

僕、スルメ。
僕スルメ。

最後に、
けっして忘れないのが、イカ子との間に生まれた長男、角倉のこと。
角倉のことだけが気にかかる。
あとは微塵も後悔はない。

噛まれて噛まれて、イカ本来の味を出すだけだ。


自由詩 スルメの人生 Copyright ひろっち 2007-03-17 01:03:24
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