ブラウン管の向こう側
五十川由依

手をのばす
切り貼りされた
世界の向こう
子どもの声など届かない

紅い空気は
カワイソウネの一言で
青い空気にかえられた
叫び声など届かない

おいしい所だけ
とりあげているデータは
私の瞳につき刺さる
被害者はどっちだ

すました顔したコメンテーターに
この味はわからない
土の下に落とされた者の味わう
この味は

ワイドショーしか見ない奥様
ブラウン管の向こうの
恐怖は知らない

一言が命とりなのさと
硝子は笑って
カメラをまわしはじめる

残された畳は
物語を語らない
日記帳に残された言葉が
かなしく響く


自由詩 ブラウン管の向こう側 Copyright 五十川由依 2007-03-16 19:39:28
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