はじめ

 夢の波止場に着くと
 僕は簡易な船を降りた
 空は真っ白で波止場はチャコールグレーだった
 やけに落ち着いた人々が行き交い
 さっぱりとした潮の香りで満ちていた
 この何の変哲もない空は僕の心を表していた
 僕は何か光を隠しているような気がする
 木箱を運んでいる船夫にぶつかった
 ここから君の街まで行くにはどうしたらいいんだろう
 この場所以外空の色と同じフィールドが広がっているだけだ
 君の街はシミのように何処かに点在し拡大しようとしているだけだ
 もうすぐこの場所と繋がるつもりだ
 僕は広がったシミを渡って君の街へ行く
 君の街は一年に一度滅びる
 街は生きていて自然と同じように春になると再生する
 でも今のこの世界は季節が無くなったから街はずっと滅びたままだ
 僕が来た時には街を囲む煉瓦の壁や中の建物は死んだように崩れている
 それをいつになれば片付くか分からない早さでゆっくりと人々は片付けている
 人々はいつになれば春がやって来るのか分からないのだ
 そんなことこの街に住む人々には関係無い
 平和に暮らせればそれでいいのだ
 春になるのを待っていれば自然に街は再生するのに、だ
 僕は街に着いて君を探す
 君はある家の屋根に登って壊れた煉瓦を集めていた
 僕は君に下から声をかけた
 君はそれに気付き笑顔で僕に手を振った


自由詩Copyright はじめ 2007-03-16 04:30:35
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