ジョニーとの別れ
しゃしゃり

おれの話を
きいてくれてありがとう。
むかしジョニーってゆう友達がいたんだ。


ジョニーと最後に会ったのは
春の風が吹き荒れる
夕暮れのことだった。
おれたちはいつでも土壇場だったのに、
思いつめたことなんかいちどもなかった。
だけど、
その日だけ、
ジョニーは思いつめた目をしてた。

こころの扉なんて
気取った言い方をすれば
その扉の閉て付けがわるいんだ。
風が吹くたび
ヒューヒューと吹き込んでくる。
それをさびしさとは言わない。
なぜなら、
その反対なんてないから。
あたりまえのことだから。
おれたちはいつもさびしかった。
とてつもなくさびしいので、いつも馬鹿をやっていた。
ジョニー。

いんちきジョニー。
きまぐれジョニー。
葉っぱのジョニー。

おれの愛した女はマリンちゃんさ。
ジョニーの腹違いのいもうとさ。
いつも透き通るようにうつくしく、
おれのこころを引き裂いてパリへいくのさ。
恋。
恋恋。
恋恋恋。
マリンちゃんはおれの手にぱたんと手をのせ、
ジョニーへの贈り物をあずけたのさ。

それは、
血染めの写真さ。
ジョニーのお袋さんの写真さ。
ジョニーがどうしても、返してほしかった写真だ。
でもジョニー。
お袋さんはもういない。
お前がどんなにのぞんでももういない。
だけどジョニー。
マリンちゃんはいる。
マリンちゃんは、いないんじゃねえ、いるんだぜ!


ジョニーとおれが絶交したのは
春の風が吹き荒れる
夕暮れのことだった。
いくじなしのあいつ。
閉て付けのわるいこころをパタンパタンといわせたままで、
さびしいアーケードへ消えていった。

とうとう、
ジョニーとマリンちゃんは、会うことはなかった…
おれはニューヨークへいく。
もうジョニーにも、マリンちゃんにも、
二度と会うことはないだろう。
こころはいつでも摩天楼さ。
どこへ行ってもよそものさ。


だけどなぜかジョニーに会いたい。
だけどなぜかジョニーが恋しい。
だけどなぜかジョニーを思い出す。


ある日
旅立てないままのおれに
一通の手紙が届いた。
いちまいの写真。
ジョニーは鳥取県なんかへ行かなかったらしい。
マリンちゃんはパリなんかへ行かなかったらしい。
凸凹兄妹の、
ジョニーとマリンちゃんはいまでも、
ときどき喧嘩しながら、
横浜かどっかで暮らしてる。



むかしジョニーっていう友達がいたんだ。
いまではもうそいつはいない。
本名の勲になったのさ。




          おわり。


          P.S.
          今じゃすっかりフランスにかぶれて、
          なぜかセルジュと呼ばれてるらしい。






自由詩 ジョニーとの別れ Copyright しゃしゃり 2007-03-15 20:50:31
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