在る男は一目ぼれの恋をこう言い訳た
瑠音



襲ってきた願いが
貴方に似ていた。





深夜の宴が何度目かの乾杯を迎える頃
僕たちはまだ少し冷たいテラスで
指切りをすることと同じ意味を持たせた
短い 短い キスをする
まるで儀式のようだ
そんなものに何の意味もないことを
よく よく 理解した上での儀式


薄紫色の髪飾りをそっとはずして
僕の口元にそっとあてれば
君は返してと微笑んで
そして
僕を
迷路に落とす


唐突に襲ってきた願いが君に似ていた
いつからかそっとそっとそっと
そっとすることでしか
忘れられなかった願いに
君の指先が
それ以上にそっ と
触れたとたんに
はじけた


好きだと口にするには短すぎる時間が
手を伸ばすには近すぎる距離が
言わせた言葉は
”さよなら





そして宴は
最後の乾杯を








貴方に似た願いは
貴方に似た願いは

ねえ
願いは
叶わないから
美しいのですよ











自由詩 在る男は一目ぼれの恋をこう言い訳た Copyright 瑠音 2007-03-15 18:51:25
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